![]() だから没後250年というまたとない機会を逃す手はない、と思い切って全曲演奏を企画しました。 すてきな和声進行、堅固な対位法的構築性、軽やかに舞い上がって中空を漂うようなメランコリーといった、いろいろなラモーらしい要素が共存する4曲は、取り組むほどに味わい深くなっていきました。 合唱はなんだか完成度の高い音楽に「歌わされ」てしまったような、のりのいい演奏でした。 今まで17世紀のフランス・バロックの音楽をたくさん歌ってきて、フランス的な下地ができてきた上での、18世紀のラモーですから、音楽への理解度も深かったと思います。 歌ってみて初めてわかること、たくさんありますから。 声楽と器楽の相乗効果もあります。 オケのフレージングは、歌詞のついている歌に合わせるのですが、合唱がそのあたりをはっきりと表現できていると、オケもすんなりそれに合わせていけます。 合唱もオケの鮮やかな響きに触発されて、どんどんいい響きになっていきます。 合同での練習の課程でそのように音楽ができあがっていくのをみるのは、楽しいものです。 もちろん苦心したこともあります。 まず、楽譜が完全ではないのです。 ヴェルサイユ・バロック音楽センターから出ている版を使ったのですが、単純にミスプリと思われるような間違いも結構あって、練習中にどうも変な音になると気づいて修正したような個所もあります。 幸い、最近もう一つ別な出版社から新しい版が出たのでそちらも参考にすることができました。 そういう間違いは逆に、その箇所に対する演奏者の意識、音楽への理解を深める効果もあって、いいことでもあるのです。 もちろん基本的にはヴェルサイユ・バロック音楽センターの活動は素晴らしいです。 今回の演奏会には合唱に、ヴェルサイユ・バロック音楽センターに留学して勉強中の村上君が一時帰国中ということで急遽参加してくれました。 センターで出版している楽譜はオンラインで購入でき大変便利で、ありがたく利用しています。 楽譜の話の続きですが、作曲者の没後に作られた筆写譜しか残っていない曲では、そもそも楽器のパート割り振りに問題がありますので、そのあたりも試行錯誤が必要になります。 特に今回オケの練習が始まる直前に気がついて、変更したおもしろい楽章があります。 後世の筆写譜ではヴァイオリン2部にフルートを重ねて演奏するように指示されているのですが、これを第1ヴァイオリンに当たるパートをフルートだけに、第2ヴァイオリンをヴァイオリン全員で演奏しました。 それはそれは実にラモーらしいと言ってよいオーケストレーションになったのです。 低弦は今回も演奏者の工夫と努力のおかげでとても充実したものとなりました。 ラモーのスコアでは、普通のチェロでは弾けない低い音がいくつも出てきます。 これは当時使われていたバス・ド・ヴィオロンという低弦の楽器が、近代のチェロより全音低く調弦するためです。 今回の演奏でもそういう楽器を使いました。 しかし現代の奏者は普段はチェロ弾きですから、運指をひとつずつずらす必要があります。 これは大変なことです。 さらに、ラモーの曲は作曲の年代によってオーケストラの考え方が変わっています。 初期の2曲はバス・ド・ヴィオロンと同じ高さで弾くヴィオローネを使い、18世紀中頃に大幅に改作された曲の方は、オクターヴ下を弾くコントラバスを加えます。 演奏会の前半後半で違う楽器を使うわけです。 練習会場にずらりと並んださまざまな低弦楽器の数たるや、なかなか壮観でした。 独唱陣はいつもながらみなさん本当に素晴らしいのですが、そのなかでも特に中嶋克彦さんは実に貴重な歌手です。 フランス・バロックでは軽やかな明るいハイ・テナーであるオートコントルという声部があり、その音域でフランスらしい響きを出せる人はそうそういません。 もちろんベル・カントになってしまっては、アウトです。 中嶋さんはまさにオートコントルにぴったりの声をお持ちなのです。 指揮者、指導者として、反省点ももちろんたくさんあります。 もっともっといい演奏を目指したいです。 でもフランス・バロックのグラン・モテには、やるたびに魅了されていきます。 日本ではほとんど聴くことのできないこの素晴らしいレパートリーを、これからもどんどん演奏していきたいと思います。
by fons_floris
| 2014-09-03 13:00
| 合唱団フォンス・フローリス
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