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【フランス・バロック】シャルパンティエを歌った!
去る2010年12月26日(日)神田キリスト教会で行われた合唱団フォンス・フローリスに出演した、はちへいさんによる演奏会報告です。

【フランス・バロック】シャルパンティエを歌った!_c0067238_031862.jpg演奏曲目:マルカントワーヌ・シャルパンティエ
Marc-Antoine Charpentier(1643-1704)
真夜中のミサ Messe de minuit
わたしたちの主イエス・キリスト御降誕の歌 In Nativitatem Domini nostri Jesu Christi Canticum
ほか

出演:古楽アンサンブル「コントラポント」
独唱
ソプラノ/アルト 花井尚美
テノール 及川豊 バス 春日保人 ほか
器楽
リコーダー 太田光子 辺保陽一
ヴァイオリン 小野萬里 丹沢広樹
ヴィオラ 上田美佐子 ヴィオローネ 西澤央子

合唱
合唱団フォンス・フローリス

指揮・オルガン・合唱指導:花井哲郎

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 数年前に、「合唱ができるまで」という映画を見た。題名の通り、最初から最後まで合唱の練習シーンしか出てこない。合唱経験のない一般人にはつまらない映画かもしれない。
 この映画の中で取り上げられているのがマルカントワーヌ・シャルパンティエの「真夜中のミサ」だった。パリの合唱指揮者クレール・マルシャンが様々な年代のアマチュア合唱団に独特の技法を駆使して練習を進める様子が描かれている。
 演奏会本番が始まったとたんに終わってしまう映画の続きを、是非自らが体験してみたいと思っていた。
 ・・・というわけで、1年間楽しみにしていた演奏会が近づいてきた。




 
12月19日(日)、合唱の合同練習。

 東京のメンバーと関西のメンバーが初めて一緒に練習を行った。
 音程、強弱はもちろんのこと、イネガル、装飾法、フランス風のラテン語発音など、フランス・バロック特有の様式を再確認する作業が続いた。
 合唱団フォンス・フローリスとしては決して避けては通れぬ道である。東京、関西を問わず、メンバー1人1人の努力と技量が要求される。
 私もかつては「何だこれは?」と思ったその歌い方だが、一度「ビィーヨン・ビィーヨン(注)」を身体が覚えてしまうと、もう「ビィーヨン・ビィーヨン」なしでは生きられないのである。(注:アウフタクトから次のアクセント拍を歌う際のおまじない)

 今年から始めたメンバーの中には、これがなかなか身体に馴染まず苦労されている方もおられるようだが、まだ1週間ある!?・・・個人練習をしっかりやろう!>合唱メンバー

 12月23日(祝)、古楽器のスペシャリストコントラポント登場。器楽と合唱の合わせ練習が行われた。

 器楽と一緒にアンサンブルできるのがうれしい。普段聞くことのできない音色を響きの中に見つけ、その音とコラボレートする。幸せな瞬間だ。
 しかし安心してはいけない。様式にのっとって正確に歌う必要がさらに増す。器楽の華やかな雰囲気に飲まれて適当に歌ってしまうのである。
 心を引き締めて歌うのだが、それでも器楽メンバーから「合唱の音のピッチが微妙に違うのでは?」との確認メッセージをいただいてしまった。。。

 12月25日(土)、いよいよ本番が明日に迫った。小合唱メンバーもそろい全体的な通し練習も行われた。

 小合唱と器楽の合わせの場面・・・器楽メンバーの譜面では歌のフレーズの確認ができないため小合唱とズレてしまう。そんな時には即座に合唱用の楽譜を並べて置き、2度目にはきっちり合わしてこられる。そういった器楽メンバーの対応ぶりに感心してしまう。
 また、微妙に流れが変化するフレーズではそのたびに細かい妥協なき確認作業が繰り返された。

 そんなやりとりを聞いていると、素晴らしい音楽を実現することがいかに大変かということを再認識するとともに、自分がもっと繊細に歌わなければならない箇所がたくさんあることに”今さら”ながら気がつき青くなる。

 グローリアの後に演奏される「器楽だけのノエル」の練習にて、楽曲中2回しか出てこない音(しかも半拍分の長さ)のハーモニーが悪い、と器楽メンバーが確認作業を始めた。指揮者と合唱メンバーはしばしその行方を見守る。
 テンポよりゆっくり弾いて音を確認する。それでもうまく行かず、今度は問題の音で止まってみる。止まっている間に各人が微妙な調整を行う・・・うまくいきそうだ。
 再び最初から続けて演奏すると、問題の和音の場所で今までに聞いたことのない素晴らしい響きが浮かび上がった。練習会場中に感嘆の声が上がった。

 12月26日(日)、本番の日を迎えた。

 神田キリスト教会の祭壇は緑のクリスマスツリーと真っ赤に装飾された鉢植えでキラキラ輝いていた。客席は超満員。当日券の販売が中止されるという盛況ぶり。

 お客様に失礼のないよう、自分のすべてを出し切るべく集中して舞台に上がった。

 ・・・・

【フランス・バロック】シャルパンティエを歌った!_c0067238_238384.jpg
 本番は良い響きで歌えたのではと自己満足している。全体の音楽にほんの少しでも貢献できていたらうれしい。
 クレドの後半に出てくるメリスマの中で、どうしても正しい音程で歌えない音があったのだが、昨夜のホテルでの特訓?が功を奏したか本番ではきっちりと歌えることができた。

 演奏終了後の拍手はうれしいものだ。特にアンコールでは指揮者が最後の棒を置くや否や大拍手をいただき感激した。

 終演後、大阪からわざわざ聞きに来てくれた友人のもとに急ぐ。彼女の感想を聞くのがとても恐い、でも早く聞きたい。
 開口一番「良かった。」と言っていただいた。イネガルや発音が徹底されているので雰囲気が良く出ていたとのこと。それとリコーダーに感激されていた。ふう、やれやれである。

 聖堂から階下に降りてこられたお客様の顔がみなさん穏やかだ。出演メンバーを見つけて話しかける時には笑顔が溢れている。

 控え室では器楽メンバーの楽譜を回収するシーンに遭遇した。みなさんの楽譜を手放すのを惜しまれる様子が印象的だった。

 神田教会を出て打ち上げ会場に移動。ビールが美味い。一緒に演奏した東京の方々との束の間の懇談が楽しい。

 打ち上げを中座し、最終新幹線で関西に戻る。
 車内でリハの録音を聞きながら本番にどんな音が教会中に鳴り響いたのかを想像してみる・・・できれば客席に座って響きの中に包まれていたかったなぁ・・・。

 ちょっと本音を言うと、合唱の出番が少なかったので「歌ったぞ!」という直接的な達成感は少ない。でも素晴らしい音楽を奏でた一員として舞台に立てたことを嬉しく思う。

 器楽の心地よいフレーズが何度も頭の中を駆けめぐる・・・知らぬ間に眠りについていた。

(はちへい)

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by fons_floris | 2011-01-04 11:00 | 合唱団フォンス・フローリス
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