Ottava のこと(花井哲郎)
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今週月曜にインターネット・ラジオの Ottava の番組 amoroso に生出演した。1週間はオンデマンドで聴ける。Ottava は残念なことにこの6月で放送休止するという。7年前の放送開始にあたって、ヴォーカル・アンサンブル カペラが Ottava のために番組ジングルなどを録音したので、そのことについてこのブログに記事を書いた。


この7年間、Ottava には毎日カペラの歌うルネサンス・フランドルの響きが一定時間ごとに流れていた。あたかも教会で日々聖務日課が唱えられているように。それはちょっと僭越な比較かもしれないし、もちろん修道士達の修道生活とその祈りの歌にはとうてい及ぶべくもないが、放送を通して、その日々の繰り返しを通して、この音楽が持っている本来の目的をほんのわずかでも現代に還元できたのではないかと感じている。そして7年という数は、この宗教音楽にとってきりのよい象徴的な意味を持っているような気もしてくる。




Ottava のスタジオがある TBS には初めて行った。

いつもの NHK ではばっちり原稿を書いて推敲して、それを読み上げて収録して、不具合があれば録り直したり編集したり、ということをしている。それが今回は慣れない生放送で、しかもスタジオに入ると番組プレゼンターの林田さんが何から何まで一人でやっている。CD をかけたり、ネット配信用に放送の途中で曲名などをパソコンに打ち込んでその場でアップしたり、かけている曲がもうすぐ終わりそうなのに、次にかける曲の打ち合わせを私と続けていたり。挙げ句の果てに途中から出演する(別の番組のプレゼンターでありミュージック・ディレクターの)斎藤さんが時間になっても現れなかったり(!)と、それはなかなかスリル満点の楽しい放送だった。


番組の中でリスナーからのお便りの紹介があった。カペラの音楽を心から気に入って頂けているようで、それも Ottava のお陰でファンが広まったと知ることができ、それはそれはうれしいお知らせだった。


ご自分でもルネサンス音楽を歌って楽しんでおられる方から、歌い方のこつは?という質問があった。即答はできなかったし、言葉ではとてもお伝えすることはできない。ご一緒に歌うことで理解して頂ける類のものだからだ。

あえてひとつだけ言うなら、そして折に触れて私が指導の時に言っていることは「ルネサンス音楽の演奏は助け合い、助けあわれ合い」。

すべてのアンサンブルの基本でもあると思うが、歌を歌う人にはそれが意外とできていない人が多い。特にポリフォニーの世界では自分の声、音程、フレージングは他の声部の動きを助けるものでなくてはならない。そして自分自身も、他の声部の動きに助けられなくてはならない。

具体的には、ただ拍子に合わせてリズムを刻むのではなく、他の声部のリズムに反応してそこにうまく絡み合うように旋律を絡み合わせていく。音程は各自が正確に歌うのではなく、ある声部の音程を聴いて、そこから5度や8度をとって、純正な音程を作っていく、ということだ。

そのような相互関係のうちに音楽を作っていこうという意識の持ち方がないと、ルネサンスのポリフォニーの真の姿に迫ることはできないのではないかと私は考えている。

女声だけでできるルネサンス音楽はないかというご質問もあった。数は少ないが、音楽大学で女声合唱の授業をしていた頃よく取り上げていた曲で、素敵な曲がいくつかある。

Jacob Obrecht, Ave maris stella
Palestrina, Salve regina

などなかなかいいですよ。

あと、ジョスカンのミサ曲の中にも女声だけで歌える2声部のセクションがある。Missa Gaudeamus の 第2 Agnus dei はカノンでできていて、かなり複雑な旋律なのに絶妙に絡み合っていって素晴らしい。

他にもいろいろあると思うが、また次の機会に。

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写真は、OTTAVAのブログ から転載させていただきました。

今回の放送は、5月19日の番組放送前までオンデマンドで配信されていますので、ぜひお聴きください。OTTAVA amoroso

放送内で流れた、コントラポント合唱隊の演奏、マルカントワーヌ・シャルパンティエ作曲「女子修道院のためのスタバト・マーテル」はYouTubeに動画がアップされています。

花井哲郎の活動を紹介しているサイト:フォンス・フローリス

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by fons_floris | 2014-05-15 16:30 | 花井哲郎
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